現況

自分のオートバイには2口のUSB電源を3つ装備しています。いずれ車載機器をいくつか作って試験をするのに必要になるだろうということでやったことですが、実際にスマートフォン、アクションカメラ、予備バッテリーの充電で6口のうちの4口を同時に使用することがあるので、それほど余分な口数という感じがしません。

最近はスマートフォンでナビソフトを使う、アクションカメラで動画を撮影して動画サイトに載せる、ドライブレコーダーを設置して事故に備えるといったことをするオートバイ乗りも増えてきました。

いろいろなことをやってみたいと思うのは人の性。メーカーも後追いでUSB充電用の電源を内蔵したり、対応車種は少ないものの、Apple CarPlayに対応したコンソールを標準装備し始めました。

ところが防塵防水対策が必要な上に車載器の設置スペースが少ないオートバイですから、様々な電子機器の搭載を考えても諦めてしまう人が多いと思います。

オートバイは全身を使って操作することを楽しむ乗り物です。最近話題になっている四輪車における自動運転のようなものを望む人はとても少ないと思われます。むしろ積極的に人間が操作することを好むオートバイ乗りが多いのではないでしょうか。よく知った道を行ったり来たりして運転を楽しむならナビはいらないし、人に見せない(見せられない)運転をするならアクションカメラはいらないし、ドライブレコーダーもなければないでいいし、一人でのんびり旅をするならインカムもいりません。あったら便利で面白いかもしれないけれどなくても構わない、むしろ不要だと思う人も多いのではないかと思います。そう考えると、これらの電子機器がオートバイに標準装備されることはなさそうです。

不便を楽しむ???

不便を楽しむ贅沢、非日常を楽しむ贅沢、簡素であることを楽しむ贅沢なんていうものがあります。

わざわざ不便を承知でキャンプをするとか、都会の雑踏を逃れて野山を駆けまわるとか、無くても良いものを徹底的に排除して暮らすとか、野性的というか前時代的というか非文明的というか清貧思想的とか、いろいろな趣があると思います。

私自身、オートバイをやめて自転車に傾倒したことがあります。まさに余分なものを排除して簡素を旨にした暮らしを楽しむといった趣だったわけですが、自転車で日に400キロ500キロを走るれるようになって、オートバイに乗ることを再開したら、自分の基準が変わってしまって、400キロ500キロ走っても物足りない。削ぎ落とした暮らしは、以前よりも強い欲望を生んだような気がします。キャンプをすると家で寝食するのに比べるとお金も時間もかかります。自転車旅は猛烈に飲み食いをするしスピードも出ないので自動車やオートバイで旅をするよりもお金も時間もかかります。不便を金と時間で買ってるような状況になるから、むしろ贅沢な遊びになってしまいます。(現代人の暮らしを100%否定して暮らすならその限りではありませんが)

そんなことを考えると、便利を否定したからと行って無欲になるわけでも清貧になるわけでもありません。あまり凝り固まった考えをするのではなく、目的に応じて便利や不便を選べるのが理想ではないかなと思います。我々は自由が欲しい。必要なものは追加したいし、不要なものは削除したい。しかも気ままに。

オートバイ用の車載機器

最近の高性能オートバイが装備するトラクションコントロールやパワーモードの選択機能などはいらない。私自身1300ccで200馬力近いオードバイを運転しますが、パワーモードは常に最強でトラクションコントロールが必要だと思うことはありません。

危ないほどのパワーだって構わないじゃないですか。あえて言われると怒る人がいる自己責任論ですが、そもそも自己責任なんていうのは当たり前のことです。自分で選んだものが自分の手に余るなら、努力するか諦めるかすれば良いだけの話です。しかし、こういったものは、たいていユーザーが選べません。メーカーが専用設計してオートバイに組み込んでしまうので、取り外すことも、後から取り付けることもできません。

インカムと呼ばれる通信装置があります。これは普段頻繁に嫁さんを載せて走る私などにとっては無くてなならない機器です。景色を見ながらおしゃべりしたり、食事や手洗いのことを伝え合ったり、一緒に歌を唄ったりと、オートバイ旅を楽しくしてくれる道具です。ところがで、インカムが標準装備されたヘルメットというものがありません。インカムの取り付けを想定した設計のヘルメットも少ないです。

ドライブレコーダーを取り付けたくても、手軽に購入できるものは機能が不十分で取り付け場所に困るなんていうことも普通です。

こういう電子機器は、モジュラー設計にして、オートバイのアクセサリー電源から1本の電源を引き、必要に応じて機能を追加できるようなものがあってもいいですね。ドライブレコーダー、インカムの送受信を受け持つコントローラー(ヘルメットにはマイクとヘッドフォーンと小さな送受信機が着くだけ)、バックカメラ、ナビ、盗難防止装置などを基板を積み上げるだけで増設できるような設計のもの。

具体的に各々について書きなぐってみます。

メインコントローラーボード

車載するコントローラーでWiFiやBluetoothなどの通信機能を持ちインカム、ヘッドアップディスプレイ、スマートフォンなどの端末と情報のやり取りをします。オートバイのアクセサリー電源から電気を取りドーターボードに電源を供給します。ネットワークルーターとして機能し、クラウドサービスとの接続機能を持ちます。機能のプログラミングが可能です。

ドーターボード

メインコントローラーボードに差し込む(接続する)ことで機能する追加機能を実装します。入出力と電源をメインコントローラーボードと接続します。

ドライブレコーダーモジュール

ドーターボードの一つ。複数のカメラ・マイクの入力とSDカードやUSBメモリへの書き込み機能があります。記録した映像はメインコントローラ経由でWifiやBluetoothでスマートフォンに転送できます。GPSと加速度センサーを搭載します。

バックカメラモジュール

ドーターボードの一つ。後方の様子を移してメインコントローラーボードのWiFi機能を使ってヘッドアップディスプレイに送ります。LiDARを使って後方車両との距離を計測して警告を鳴らすなどの機能、カメラ画像をAIで処理する機能などを追加できると良い。

ナビモジュール

ドーターボードの一つ。スマートフォンと連動してヘッドアップディスプレイとインカムにガイド情報を送信します。

環境センサーモジュール

ドーターボードの一つ。気温・湿度・気圧・照度・UVなどをセンシングしてメインコントローラ経由でヘッドアップディスプレイやスマートフォンに送信します。

盗難対策モジュール

ドーターボードの一つ。GPSと加速度センサーを搭載し、オートバイへの不審な行為や移動をメインコントローラーボード経由で通知します。

インカムとヘッドアップディスプレイ

ヘルメットに取り付けるものですから小型軽量防塵防水が条件です。 イインカムとヘッドアップディスプレイは車載のコントローラーのWiFiやBluetooth通信で動かします。

カメラとマイク

小型軽量防塵防水が条件で、オートバイの取り付けることもヘルメットに取り付けることもできます。

API

メインコントローラーボードはドーターボードの入出力をコントロールする通信サーバーでありメディアサーバーですが、これらの入出力を処理する部分はAPIを公開して、ドーターボードの開発者やオートバイ向けのITサービスの開発者の参加を促します。

おわりに

今後、無線のネットワークは5Gになり通信速度が飛躍的に速くなります。 「○○で工事してるよー」とか「○○に不審な車両が集まってるよー」のような情報を共有して危険回避をするといったシステムがあっても不思議ではありません。文字、音声、映像を容易に送受信できて、APIが利用できれば、便利なサービスを作る人が必ず現れます。どの機能も使う使わないの選択ができて、メーカーのバイクへの付加価値として買わされるのでもない。好きなオートバイ、ヘルメット、ウェアを使いながら必要な機能だけ手に入れられる。そういう自由があったら良いと思います。